Little AngelPretty devil 
      〜ルイヒル年の差パラレル

    四年に一度、だからかな?
 



今年の聖バレンタインデーは日曜日だったので、
学校や会社はお休みとあって、
女性陣は“義理チョコ”を配れない言い訳が出来て、
さぞや助かっているものかと思いきや、

 『金曜や土曜に配らにゃならんトコもあるらしいな。』
 『配らにゃならんってのが、
  すでにイヤイヤな心情が見え見えだけどもな。』

土曜がかぶっても同じことで、
そういう年は前日に配って回るのが、卒なく職場の空気を保つ秘訣だとか。
勿論、お返しなんて期待しちゃいないらしいけど、

 『二月と三月ってのは、
  オリンピックイヤー以外同じ曜日のカレンダーになっからよ、
  貰ったおじさん社員たちも、
  それなりのお返しはせにゃならんらしくてな。』

ましてや今年は三月の十四日は月曜だしな。
そうそう。
で、結局は徳用のキャンディだのチョコだのを買って来にゃならんって、
母ちゃんがぶつくさ面倒がっててよ、と。
女子マネが用意した、正しくお徳用のチロルチョコが
“よかったらどうぞvv”なんて大きめの菓子ボウルに盛ってあるのを
糖分補給にとぼりぼり食べつつ。
そういう時事ネタを話題にしていた、賊学の面々だったのを
蛭魔さんチの妖一くんが思い出したのは。
随分とベタなそれだが、
そのチロルチョコがモチーフとなってて散らばっているという
可愛らしい柄のフリースのパーカージャケットを上着に羽織ったお友達が、
ややしょぼんとして職員室から出て来たからで。

 「どした、瀬那。」
 「あ、ヒル魔くん、おはよう。」

こっちの坊やも登校してきたばかりという朝一番の時間帯。
いつもなら登校途中の道で出逢うところだが、
今朝はセナくんが日直だったので少し早めに出たらしく。
遅めに出てくる妖一くんとは、今の今まで会えないままだったという状況らしく。
それは特に珍しい流れじゃあないけれど、
朝っぱらから何だか元気がないセナくんだというのは珍しく。
本人曰く 世話好きなんかじゃあない蛭魔くんが、
おややと気に留めてしまったのも無理はなく。

 「何か具合でも悪いのか?」

重ねて訊かれて、駆け寄って来ていた小さなお友達はだが、
それこそ意外なことを訊かれたというよに大きな目を見開きかかったが、

 「えとね、まもりせんせにメって怒らりちゃったの。」
 「はぁ?」

まもりせんせといや、彼らの担任お姉崎先生のことだろが、
それほど神経質で気が短い人じゃあないし、
こちらのセナくんとは遠縁ながら親戚同士でもあるらしく。
だからと贔屓こそしないながら、
あまりに無邪気で幼さが過ぎるのも、個性だという把握をしており、
巻きを入れたり尻を叩いたりとまではしないで見守っていられるほど
寛容な性格をした 器の大きいおねいさんなはずで。
なので、

 「こんな朝っぱらからか?」

余程に見咎められたのでもなけりゃあ、
いきなり叱られはしなかろと、
そういう把握が出来ちゃう蛭魔くんだったのもまた。
どれほどのこと、このセナくんとその周囲を
きちんと把握しているかの表れかもしれなかったけれど。(う〜ん)
そんな把握の下から、なんか変じゃね?と感じたからこそ
聞き流さずに重ねて訊いてみたところ、
小さなお友達は“うん”と幼い動作で頷くと、
そちらさんもまだ背負ったままだったランドセル
ちょんと揺すり上げつつ、一緒に教室へと歩き出し、

 「あのね?
  カチューシャしてたら預かりますってゆわれたの。」
 「…あの猫耳のか?」

男の子でも髪留めするのが珍しくはなくなっている今日この頃。
お母さんが“だってウチの子可愛いからvv”と伸ばさせている子もいれば、
サッカーだのバスケだのといったスポーツをしていて
好きな選手の真似だったり
おくれ毛が邪魔だからと、
一丁前に細いカチューシャでまとめている子もいるくらい。
こちらのセナくんの場合は前者の“可愛いからvv”というくくりにて、
時々女の子向けの配色だろう可愛らしいお洋服を着ていることもあるし、

 「確か、ケーブルテレビの女子アナから貰ったって。」
 「うん。」

学生&実業団アメフト専門チャンネルの関係者とも知り合いの多い、
人気マスコットボーイの彼らであり。(う〜ん)
二月は猫の日があったのと、ここのところ猫がブームだったのとの絡みからか、
愛らしい容姿が大うけのセナ坊は、
局アナのおねいさんからそんな小道具をもらったらしく、

 「でも、あれって没収は食らわなかっただろうよ。」

あまりにウケたのと、宣伝を兼ねて日頃もつけててほしいと言われたの素直に実行し、
学校にもしてきたことがあったれど。
猫耳の部分は小さかったからか、まもりせんせは目くじら立てたりはしなかった。
そこを思い出した蛭魔くんへ、

 「ちやうの。」

ふるふるとかぶりを振ったセナくんが言うには、

 「今度はウサギさんのだったから、危ないでしょって怒らりちゃったの。」
 「…☆」

何でも、付け根というか端っこについてるボタンを押すと、
柔らかい樹脂製の長い耳がびょんと立つ仕様になってたらしく。
何かの拍子に飛び出したら周囲がびっくりするし落ち着けぬ。
出しっぱなしだとそれもまた気になろうし、
安定も悪いので落として顔にあたっては危ないと、

 “そりゃあ没収食らいもするよな。”

そこまで主張が大きいんじゃあなぁと、
さすがの小悪魔様でも納得がいった話の流れであったようで、

 「まあ、そこまでケーブルテレビに
  義理立てしてやる必要がそもそもねぇんだし。」

気にするこたねぇぞと言ってやり、

 「猫で受けたからって次はウサギを持ってくるとは、
  どれほどの悪ノリなんだかだよな。」

子供が相手だと思って図に乗りやがったか、
ああでもプロ野球のキャンプとか始まって
他のスポーツチャンネルとの視聴率競争も激しいだろから
それで必死だったのかなとか、彼なりの分析を持ち出しかかった妖一くんへ、

 「あのね、三月はいーすたあ週間なんだって。」

それはそれは無邪気なお声がかかって来、

 「…お前、キリスト教徒だっけ?」
 「ん〜ん。うちは浄土真宗だよ?」

 いやに詳しく言えるのな。

 うんと、ママがね、
 拝ませてくださいとか聖書のお話させてくださいって人が来たら、
 そう言いなさいって

となった脱線は置いといて。(苦笑)
この時期にウサギとくれば、キリスト教のイースター。
セナくんの覚束ない言い回しでのヒントもあったとはいえ、
子供ながらあっさり合点がいっちゃうところがさすが物知りの小悪魔様で。
逆に、

 「いーすたあってキリスト教の行事なの?」

まるきり知らなかったらしいセナくんなのへ
久々にしょうがねぇなぁと眉を寄せた蛭魔くん。

 「ああ、クリスマスと並ぶくらいに大事な行事だ。」

クリスマスがキリストさまの生まれた日なら、
イースターは もう一度のお誕生日といえるかも。
亡くなられたイエス様が、埋葬された三日の後に復活を遂げたこと、
大事なことだぞ忘れちゃいけないとし、教徒の皆さんで祝う日で。
こちらは日にちが決まってはなくって、
「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」に祝われる。
聖職者の方々は、40日前から大斎(おおものいみ)という断食を始め、
肉や乳製品、卵は口にせず、
イエスのエルサレム入城から受難を経て復活するまでの日々を辿ってゆくそうで。
それらが完結する当日には、復活のお祭りをし、
殻を彩った卵を信徒へ振る舞ったりするのが“イースターエッグ”。

 「ウサギも食べちゃいけないのを振る舞うからか、
  それとも多産なことから豊穣の象徴としてか、
  イースターのマスコットになっててな。」

 「ふわ〜、ヒル魔くんて何でも知ってるんだ。」

ちなみに、今年のイースターは、

春分の日が3月20日で、最初の満月が23日なので、
何と3月27日だそうです。
五月へ食い込む年もあるそうなので、

日本の旧暦どころじゃなくて、西洋の人たちも大変だねぇと思ったもんですが。

 「ウサギさんのカチューシャは、進さんも可愛いってゆってくれたから、
  ちゃんと返してもらわないと。」

はぁあと悩ましげな溜息をつくお友達だったのへ、
そうかそうかと乾いた笑いを向けてやり。

 “かわいい、ねえ。”

あの朴念仁の仁王様が、どんな顔して言ったやら、
そこへ遅ればせながら注意が止まり、不覚にも吹き出しかかった小悪魔さん。

 「? どしたの?」
 「なんでもねぇ。」

誤魔化すこととなったのが癪だったので
今日のトレーニングでは自分もウサミミつけて
大学生のお兄さんたちの反応見てやろうかなんて
企みなのはともかく可愛らしいこと思いつく辺りが、
いやあ、いろいろと春近しですねぇvv



     〜Fine〜  16.03.06


 *ややこしい暖冬だったあおりか、
  寒いのと暖かいのの落差が大きすぎな春の初めですね。
  行楽には向いてるような、でも極寒が舞い戻るのは困るような。
  早く落ち着いて春らしくなってほしいものです。

ご感想はこちらvv めーるふぉーむvv  

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